〜監修者の部屋〜
June’s Diary
2017/6/16更新
「怒り」で伝わること、伝わらないこと〜人の心を動かすには

先日、カフェの席に座っていたときのこと。
突然、自分の横に置いてあったバッグから、「ドンッ」と小さな衝撃が。
一脚ずつの椅子ではなく、壁づたいに繋がっているタイプの椅子に私は腰かけ、ぼんやり本を読んでいたのです。
自分の横に置いていたのは、パソコンが入った大きめのバッグ。
私が座ったときは隣に人がいませんでした。
その隣の席にやってきた人が、私のバッグに半分かぶせるみたいに自分のバッグを勢いよく、ドンっと置いたのです。
バッグが軽く当たったくらいなら、「あ、私のバッグ、相手のテリトリーに入っていて邪魔だったな」と反射的に反省して、「すみません」と自分のカバンを引いたでしょう。
でも、その衝動はもっと強いものだったので、反射的に出てきたのは、「き、気づいていないフリをしておこう……」という思い。
乱暴な人なのかもしれない気がして、動くのがちょっと怖かったのです。
ドスンとカバンを置いて席に着いた隣の人は、しばらくごそごそ、携帯電話なんかをカバンから取り出していて……。
それが終わると、私のバッグの上に乗っかっている自分のカバンを床に移動。
そこでホッとひと安心したとたん、今度は私のバッグを彼がドンっ強く小突いてきたのです。
奇襲攻撃を受けて面食らったウサギみたいな表情になりつつ、いちおう、隣の人に顔を向けてみた私。
今のはわざと? それとも体が当たっただけ?
相手の顔を見ている私を、彼は完全に無視しています。
体格のいい普通の男性です。
でも、その顔には明らかに怒りの表情が。
それを見た私、「すみません……」と、あまり心のこもっていない謝罪を口にしつつ、自分のバッグを逆側に移動させます。
そのときはじめて、彼はこっちを見ないまま、「ったく……」と声に出して、自分の気持ちを表したのです。
要するに、「おまえのカバン、邪魔なんだよ。隣に人が来たんだから、さっと気づけよ。まったく鈍感で迷惑な奴だ!」ということでしょう。
まぁ、おっしゃる通り、私のマナーが悪かったのです。
だけど、こういうふうに、いきなり怒りをぶつけられると素直に「反省心」が湧いてきません。
それより先に、「なんなの、この人。だからってバッグを叩かなくたって!」という怒りがこちらの心からも湧いてきて……。
そのとき、ふっと思い出したのは、ベストセラーになった『伝え方が9割』という本のタイトルでした。
読んではいないのですが、電車の吊り広告などで見かけるこのタイトルが意識の片隅に残っていたのです。
隣の女の目ざわりなバッグを取り除くことに彼は「怒り」を使って成功しました。
だけど、「あ、私のカバン、邪魔ですね。すみませんでした」という心からの謝罪を引き出すことには失敗。
これこそまさに、「伝え方」の問題なのかなぁと。
夫婦でも恋人でも友達でも、相手の行動が気に入らないこと、腹が立つことってありますよね。
そんなとき、私もつい「自分の怒り」を相手に伝えて、相手の行動を変えようとしてしまうことあるなぁ……。だけど、それって全然、相手の心に届かない伝え方なのかもしれないなぁ……。
そんなことをつらつら思った出来事でした。
怒りを伝えることは、相手の怒りを引き出すこと。
少なくとも、相手の心を遠ざけること。
あなたが欲しているのが、「相手の心からの謝罪」なら、怒り以外の伝え方を考えてみる必要がありそうです。
そもそも、怒りの発露は、敵を遠ざけるためのものです。
家族や友人に向けたら、亀裂が入るのは当然です。
とはいえ、「怒り」は抑え込まなければいけない悪い感情ではありません。
敵が襲ってきたら怒りで威嚇する――それは生きるために欠かせないこと。
相手を遠ざけたいなら「怒り」で対処。
でも、相手に理解を求めるなら他の方法を探してください。
怒りが心に湧くと、つい忘れてしまうのが、シンプルな「お願い」という伝え方。
「なんで遅刻すんのよ!」と怒るのではなく、
「今度は遅刻しないで。お願いね」と言ってみる。
「相手が悪いのに何でこっちがお願いしなきゃいけないのよ!」と思ってしまうとしたら、それは既に怒っているからです。
でも、「悪かったな」と思う気持ちが相手から出てくるのは、怒られたときではなく、お願いされたとき。
怒られると人は防衛します。
カバンをドンっと叩かれたら、自分が悪かったと分かっていても、反省心よりムッとする気持ちが先立ってしまいます。
「上手なお願い」という伝え方を身につけていけたらいいですね。
夫婦も親子もケンカが減って、気持ちよく暮らせますように……。